見放された人間にかける言葉が見つからない。
篠原は窓辺に設置された柔らかなソファに寝そべっていた。
今にして思えばこの時には既に狂っていたのかもしれない。
全てが、詳しく例えるなら篠原そのものが。
誰だって往々にして今以上に優遇されたいと願う。
そうでなければ神などは人を助けないし、人は神などを作り出したりもしない。
ポメラニアンの毛並みをそっと撫でる腕は吊り下げられた木人形かもしれない。
それほどまでにも篠原は脱力していた。
いずれわ言おう、いずれわ訪れようとどれほど決意したかも記憶に薄暗い。
人命救助福祉リラクゼーション邁進に至るも、社会は助けてくれない矛盾を理解することなど不可能でると断言する。
観葉植物も飾ってはみたものの、それは即座に面倒で、ものの7日程で不健康な葉色に変化した。
黙っていれば愁うこともないのだが、自らも漏れずに人は馬鹿だと思う。
進化は利口になることだと思うところ、間違っているのは「利口」の基準か「今の現実」か。
判断にあぐね、それでも時折繰り返し、そして篠原は疲れ果てた。
人生の4分の1も過ぎ去るとわりと基準がしっかりとする。
「これの4倍か」と思えば残りの時間は少ない物だと錯覚できた。
それでいい……
篠原が呟いた後に、ポメラニアンは確実となった木人形の腕に頭をぐりぐりと押し付けた。
PR