ツバの広いテンガロンハット。ロングコートに二丁拳銃と、朱雀によく似たいでたちをしている。
外見的な大きな違いは「サングラス」と、全体的に「青っぽい」こと。また、その性格もイーグルよりひょうきんで、ユーモアに溢れている(むしろ不真面目すぎる)。
生まれはリングランドの英雄的な射撃手の家系。その直系本家の長男で幼い頃から射撃の訓練を受けて育ったが、いかんせん現在での「射撃手」としてもっとも真っ当で高い地位はスポーツ感覚の勲章、それこそオリンピックや世界選手権などのメダルを多く集めることであり、彼としてはそれが性に合わなかった。
射撃家としての開祖、ハインディル=クイックロード(初代)の伝説を目指して彼は家を飛び出した・・・はいいものの、途方にくれる。何せ坊ちゃん育ちの金銭感覚麻痺キッドなのでまともに食事にもありつけない。しかたがないので友人の家を転々としていた(明るく、どこか憎めない上にたまにカッコイイので周囲からは結構人気がある。どこにいてもムードメーカーになれる才能と天性のしぶとさ(なぜか生き残るタイプ)はむしろ銃の才能よりも偉大である)。
そんな彼だが、銃の腕は確か。おまけに家柄によって箔も申し分ない。
これに目をつけたのがバロンズ下部組織の“マスクス”。言ってみれば新興の暗殺集団で、とりあえず実力者や名のある者、つまり組織の「看板」を集めていた。
実戦経験はともかくとして、その腕と名は高いのでさっそく彼らはハインディルの勧誘に現れる。職に困っていたハインディルは喜んでこれを承諾。その場で組織に入った。
組織に入るとさっそく最高クラスの称号である「S」のランクを与えられ、他の「S」3人と共に“ガンナーS”として組織の看板役に就いた。
しかしこの“ガンナーS”。メンバー全員が非常に癖の強いものばかりで、おまけに組織もまだ新興なのでまとまりきっていない。そこにきてハインディルは人殺しの経験も無い実戦の初心者。恐らく殺そうと思えば殺せるのだろうが、人が良すぎて何かと情にほだされてしまって仕事にならない。むしろ第三者を守ったり何故か組織に歯向かったりとこの社会の常識もへったくれも無い。
だが、確かに強いことは強い。伝説のハインディルの影響もあってか、彼は組織でカリスマ的な慕われ方をしている。しかも気取らず、下の組織員とのコミュニケーションもあっていわば“総合部隊長”のような存在。
任務の正否はともかくとして、彼はいまや組織の看板中の看板。唯一の危惧は「組織員が彼の実力を疑う」という事態。
実際このような危機は訪れるのだが、ここでタイミングよく彼は初の殺しを行う。偶然の出来事だったが、彼はある少女の尊厳を守るため、外部組織(地方マフィア。コインズ及びバロンズと関係が無いのは幸運だった)を一つ殲滅してしまうのだ。任務ではないが、名のある組織を無傷で壊滅させたその実力は組織どころかその外にまで響いていく。ここにきてようやく、彼は“看板”と“切り札”の意味を兼ねる“ガンナーS”に相応しい存在となり、組織も安心して放っておけるようになった。
同じガンナーSである三人のガンマンたち。その中で唯一の女性であるエルコット=ホルスに彼は恋心を抱き、猛アタックをする。実は一途な彼は何かと彼女を気にするようになるが、エルコットにその気は無い。
しかし、彼女は悪女なのか。酒の席で自分が昔、ハインディルと同じ年頃の男と寝たことを話す。ハインディルはショックに撃たれるが、彼女が「あんたも、もう少しかな……」と続けたことで奮起する。
ハインディルは彼女に気に入られるために必要な事を模索するが、中々わからない。惑いながらも彼女の後ろを追いかける彼は、やがて1人の青年と対峙した。その青年は彼と同じようないでたちで、やや全体的に赤っぽいガンマン。
二人の青年はいろいろと渦巻く心境で相対する。だが、二人の精神は戦いの中で“男”として濃密なものとなり、命をプライドに、プライドを命として銃口を向けあう。
同じ女性に惑わされた二人の結末は・・・・・・。
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